見通せぬ暗闇。

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確かに戦闘では、僕の戦いも含めて敵に五百人以上の損害を与える奮戦をした小隊だったけど、通信が途絶えた僕らを救うため派遣された、防衛陸軍虎の子の空挺団一個小隊の急襲によって、奴らを恐らく一人残らず撃滅したのだけれども、結果は、小隊の生存者は僕のみで、都市の生き残りの住民の大半は殺害済みで、安全都市の安全の二つ名は、ただの神話に過ぎなかったことを、日本全国に知らしめてしまう事になってしまった。 「上層部は、さぞ苦虫を噛みしめてるんだろうね。どうでもいいけど」  前線で戦い続けている僕みたいな者にとっては、真に安全な場所など存在しない事は周知の事実なのだから。 「やっぱり、僕たちの戦い方が甘いからこんなに犠牲が出るんだよ」  政府要人も地下になんか引き篭もらず、ほんの少しでもいいから戦場に赴けばわかる話なんだけどな、そう僕は思ってしまう。 僕からしてみれば大昔の敗戦の心の痛手を、今なお引きずり続けている政府のやり方に、苛立ちを隠せない。 「もう国内が戦争になってから四年近くも経過して、もうちょっとしたら五年目になるっていうのに…なにやってんだか」 ≪……≫  日本政府は未だにこの戦いを?宇宙規模の世界を脅かす重大事案に係る、国内に於ける特別重大事案?という、聞かされるこっちも意味不明で長ったらしい文章でこれを呼称していて、内戦だの世界戦争だのといった的確な文言を用いようとは今でも頑なにしようとはしない。 「まさか未だに会った事も無い、ひいひい爺ちゃんの代の付けをまだ、支払ってるつもりなんだろうか?」  もし、そうだとしたら、必死に生きて死んでいった百合子嬢も浮かばれやしないよ。     
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