出会い。

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 それは僕が子供の頃に経験した。引力を歪まされた地球に向かって、一斉に流れ星になって大気に触れ、摩擦の炎の尾を引きながら墜ちて来る人工衛星の群れ。?瞬く星のシャワー?を見て仕舞ったら、もうこんなにも巨大な月を誰に知られずに運んできた【何者か】に勝てないって、どんな子供でもわかったんだから。  たとえそれが美辞麗句で虚飾した、とっても勇ましい言葉を並べ立てる各国首脳や高級軍人に科学者、マスコミのコメンテーターの言葉なんかよりも、ずっとね。  だから僕は軍人になったんだ。 「それにしてもさ、僕たちってさ」 ≪なに?≫ 「まるで小さな地球で飼い殺し状態だなって…っと?」 突然機体がガリッと響く異音を発し、前方に出していた左脚部に滑るような衝撃を感じ、同時に機体の動きが制せられる。 「うわっ!リンネどうなってるの?」 ≪瓦礫にまぎれたワイヤー状の物体が展張されたみたいだよ≫ 僕は咄嗟の判断で超振動ナイフを左前椀部から繰り出して、前進を阻むワイヤー状の何かを切り裂きながら、小刻みに自分の体ををゆすり機体の動揺を抑えつつ右方向に横滑りさせる。 ≪トラロープだよ!≫ 「トラロープ?」 僕はリンネの声に反応しつつ、それでも装甲体の動きを絶対に止めないように前進を使って操作しつつ、左椀部のマニピュレーターを高速回転させ、脚部に引っかかったままのトラロープ巻き取らせ、危険な行為に及んだ何者かの正体を探る為、24式57㎜把握式自動機関砲を機体に構えさせた。     
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