見通せぬ暗闇。

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 僕は機体を第一目標である山裾の岩場の陰で停止させ、ちょっくら一休みを決め込むことにした。  三カ月前に重傷を負い、助けたはずの少女を戦場で見失い、自分が所属した部隊は僕とリンネを残して全滅し、しかも不本意ながら重傷を負い長期療養を余儀なくされてたけれど、野戦病院きっての模範患者として、先生や看護師の言う事をよく聞いて無理をせずリハビリに励んで無事退院。 晴れて原隊に復帰を果たした僕は、その日からせっせと訓練に明け暮れ、只今ここ、生々しい戦場に舞い戻って来れたので心はウキウキだ。 「早く戦いたいな。出番あるといいなぁ」 ≪焦らない焦らない♪≫  無鉄砲に見えて命令には割かし忠実な僕は、仕方なくコクピット内で片膝を抱き、悶々と出番が来るまで過ごすしかなかった。 「今日は晴天だね」 ≪んん?≫  これ以上はないくらいの真っ黒な空にスコープの照準を合わせと、あのデッカイ黒い月が、空を覆いつくしているのがハッキリとわかる。  そして怪訝そうな画面の中のリンネの態度も。     
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