国民爆弾。

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 僕にはよく分からないけど、本来なら軍によってあらかじめ感情を制御された存在である〝戦闘用AI〟であるリンネは、さも楽しそうに疑似モニターの中で微笑んで、背中に生えた四枚の白い羽根を広げてふんわりと浮き、人差し指を国道十一号線の西方向を指示した。 「わかった。じゃあ道に乗るよ。きつめに行くから振り落とされないでね♪」 ≪映像なのにどうやって落ちるのよ♪≫  二人にこやかに軽口をたたき合い、僕は東に向かい機動中の自分の24式機動装甲体の向きを、国道上に向けた。 ≪凄い数だね。こんなにヒト、残ってたんだね≫  喚声もなく、どよめきもなく、ただただ僕たちに向かい、一途に駆け迫って来る無言の集団に発したリンネの言葉は、淡々としている所為もあって不気味さを孕んでいる言葉であった。 ふわふわ、ふわふわ。  疑似モニターの中で、彼女は四枚羽の天使の格好のまま浮かんでニッコリしているのが、なんだか生者を狩る神じみた存在のように見えた。 「ザ…226、226! こちらザ…ザ…211! ザ…すまん!合流させてくれ!」  僕の機体が激しく機動していたせいか、いくら正確な送信を旨とするレーザー通信システムと云っても、こう動いているとその指向性の正確さのためか、時折通信が切断してしまい雑音が混じってしまう。 「おい226! こちら221 ザザ…。返事くらいしろよ!」  あっ。そうだった。無線の具合の感想を心の中で述べてる場合じゃなかった。     
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