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ひきこもるプラネットに贈る
平成――――それを記したサカナシは、もうどこにもいない。
***
おはよう。
迎えにくるのが遅くなってすまない。きみがどこで待っているのかわからなかったんだ。
待っていないって? 目覚めたばかりだったのか。それはよかった、ちょうどいいタイミングだったんだね。
不思議そうな顔をしているね。僕も何から説明したらいいのか困っているんだ。
まずは自己紹介をしようか。
はじめまして。僕はサカナシ。きみの先輩になるかな。
このJP地区管理タワーに勤めているんだ。きみが目覚めたこの場所はJPタワーの一階にある職員用の休憩室さ。
きょろきょろと見渡して忙しそうだ。もしかして僕を探しているのかな。残念ながら、まだ視えないよ。
僕たちは体を捨てて、魂元と呼ばれる状態になっている。魂元同士だからこの通り、意思の疎通は可能だけど、体がないから姿を視ることはできない。
でも姿を感じとることはできるはずだ。魂の目を開いてごらん。僕はこの部屋のどこにいると思う?
きみがいるボロのパイプベッドのとなり、それともあの丸椅子? がらんと空いて寂しそうな本棚に寄り添っているかもしれないね。
……正解だよ。僕は扉の前にいる。魂の目を開くことができたみたいでよかったよ、これで仕事を教えることができる。
僕たちJPタワーの管理者は仕事があるんだ。これからそれを教えるよ。
この部屋を出よう。ああ、でも気を付けてくれ。外には『やつら』がいるからね。
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