背徳

1/16
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

背徳

今日は金曜日。 特別な日だ。 私は朝から緊張している。 背中がぞわぞわして落ち着かない。 いや、多分あれを読んでからずっと、金曜日は落ち着かない。 だけれど、今日の金曜日はいつもと違う 自分の人生とは全く関係の無い事なのに。 それでも気にせずにはいられなかった。 彼らの行く末を、私は覗き見している。 その背徳の恋を知っているのは、私ただ一人。 その存在に気がついたのは三ヶ月ほど前だった。 図書委員の私は火曜日と金曜日に係りになっており、昼休みと放課後にカウンターに立つ。 ある日、誰も来る気配の無い図書室内をあまりにも暇で一人徘徊していた。 そこで気が付いたのだ。 誰が利用するかも分からないが、一番奥の目立たない棚に置かれた持ち出し禁止のシールの貼られた分厚い辞書二冊。 それに挟まれた、シンプルなノートを。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!