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「若いなあ。俺は二十五歳だけど君からしたら、おじさんだよね」
年齢を告げられた広夢は「いえ」と小さく答えた。
「何か悩みごとでもあるの?」
「えっ?」
唐突な質問だった。崇之の方へと視線を戻した。もう動いていいのだろう。ポーズの指示はなかった。
何故そんな事を聞くのか。広夢は眉を顰めた。鉛筆が画用紙の上を滑る音がする。崇之は髪の部分を描いていた。
「よかったらお兄さんに話してみてよ。美大出身だし、絵に関する悩みなら少しならアドバイス出来るかもしれない」
「美大……ですか?」
広夢の青い心が小さく躍った。興味があったからだ。手を止めた崇之が微笑を浮かべて言った。
「昔から絵を描くのが好きで、父の反対を押し切って入ったんだ。説得するのが大変だったけど」
「そうですか……」
家族の反対を受けながらも進みたい道に進んだ。広夢はそんな崇之を少し羨ましく思っては、今の自分と比べて落ち込んだ。
「今、受験生? 勉強とか大変じゃ無い? 目指している学校とかあるの?」
「はい。まあ、それなりに……ありますけど……」
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