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同性を恋愛対象に見ているかもしれない。そう感じ始めたのはつい最近の事だ。とは言っても、まだ恋すら経験した事の無い広夢にとっては断言するのに躊躇いがあった。
しかし、今までを振り返れば、女子に興味を持つことはなかった。思春期に突入しても女性の身体に何の魅力も感じない。まだ幼さの残る性器は反応すら示さないのだ。
その代わりに体育の着替え時間で目にする男子同級生の体には酷く緊張した。発育途上の腕や胸の筋肉、腰や太腿にもつい視線が向かってしまう。気持ちは昂ぶり、もっと見たいといった願望が生まれていた。相反するように、絶対に認めたくないといった気持ちがあった。崇之からの質問はタブーに近いものがあった。
「ごめん、怒っちゃった?」
黙っていると、崇之から少し揶揄った口調で聞かれた。
「……怒ってません」
感情を抑えて絵を描き続ける。
「ふーん、そう?」
そう呟いた崇之は再び手を動かした。
沈黙が流れた。波打つ気持ちを無視して広夢はスケッチに集中した。早くこんなお遊びを終わらせて、立ち去ろうと決めていた。
それから十分ほど経過したところで、崇之が鉛筆を置いた。
「出来た。うん、雰囲気は掴めてる。俺って凄いかも」
スケッチブックを眺めながら彼は自画自賛していた。程なくして広夢も書き終えた。すると崇之が手を差し伸べた。見せろという事だろう。お互いのスケッチブックを交換すると――。
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