男との出会い

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「これから進学するにつれて目指すべき道も変わるかもしれない。芸術で生計を立てるのは大変だからね。現実的ではないよ。成功者はほんの一握りだ」  現実を語りながら崇之はスケッチブックを返してきた。広夢はそれを受け取りながら言った。 「……そうですよね。両親も似たような事を言っていました」 「でも、最初から何も挑戦しないのはいけないよ。人生を後悔したくなかったらね」 「後悔……」  ポツリと呟いた広夢は今の言葉を胸中に刻んだ。 「本当に静かだな、ここは」  両手を高く伸ばした崇之が天を仰いだ。優しい瞳は真夏の太陽が眩しいと言いたげに少し細められていた。 (この人、綺麗だ)  最初の警戒心と嫌悪に似た気持ちは飛び、新しい感情が生まれていた。崇之を知りたいといった好奇心だった。今まで誰かと絵の事で語り合える事などなかった。  気の合う友人を見つけた……そんな初々しい気持ちが湧き出ていた。友人と言うには年齢は離れ過ぎているかもしれないが、もっと崇之と話をしたいという欲求が燻っていた。
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