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「広夢くんは、よくここに来るの?」
「……ここ、好きなんです。嫌な事も忘れられるし、自然を感じられるから」
解れはじめた心が崇之へと向かっていた。フワリと零れた笑みがそれを証明していた。
「俺も同じ事を思った。何だか君とは気が合いそうだな」
崇之はそう言ってゆっくりと立ち上がった。もう帰ってしまうのかと、広夢は悄然として俯いたが……。
「あのっ、また会えますか?」
再会の願望を自然と口にしていた。今日の出会いを絶対に終わらせるなと、本能が叫んでいた。
「会えるよ。君が会いたかったら、俺は必ずここに来る」
崇之は力強い約束をもって頷き返してくれた。
この会いたいといった想いが間違っていたのかもしれない。広夢は後々振り返る事となる。でも当時は違った。思春期の純真無垢な心は、本郷崇之と出会えた事に歓喜していたのだから――。
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