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(ヒロ兄、また焼けた気がする)
シャツから覗く腕と隠された二の腕の肌に色差があった。
勉学も出来てスポーツ万能の兄は誇らしい事に変わりないが、何かと比べられてきた広夢にとって、コンプレックスを呼び起こす存在だったりする。
「広夢、そう言えばもうすぐ塾の模試だろ? 順調?」
視線に気付いた広樹が聞いてきた。
「うん、何とか」
作り笑いで答えると、広樹は「頑張れよ」とエールを送った。そしてサラダに添えてあったプチトマトをフォークで取って、広夢のプレートへと置いた。
「あっ! ヒロ兄ったらダメだって」
広樹はプチトマトが苦手で、いつも広夢に食べろと言う。それに反論できないまま、食すのが広夢の性格だ。
性格が真反対の兄弟だが、容姿も似ているとは言い難い。
広樹は父似で切れ長の鋭い二重瞳が印象だ。体付きも年々父に近付いてきている。一方広夢は母似だった。昔はよく女の子に間違えられた。それすらも恨めしく感じる時もあったが、遺伝子がそうなのだから仕方がない。
「広夢、ぼんやりしていないで早く食べなさい。朝の勉強はしたの? 模試の成績だけは下げないでね」
母の声が思考を中断させた。咎めるような言い方が不快感を煽った。
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