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昨日、夕暮れまで待っていたが、崇之が姿を見せる事は無かった。
(今日は、会えるかな)
崇之の存在を求めるようになっていた。
彼をもっと知りたい。次はどんな話が出来るだろうか。期待で胸が躍った。会えるかわからないけれど、今日もあの神社に行こうと広夢は決めていた。
「広夢さ、何処の図書館で勉強してんの?」
「えっ?」
想い馳せていたところで尋ねられた。広夢は思わず広樹から瞳を逃してしまう。触れられたくない話題だったからだ。
「俺、変なこと言った? なあ何処?」
反応を不思議がった広樹が追及する。
答えられなかった。崇之と出会った翌日から図書館には全く足を運んでいなかったからだ。
「……学校の図書館だよ」
嘘をつくことに抵抗はあったが、それを選んだ。
「学校? だったら家で勉強しろよ。昼メシはどうしてる?」
指摘を受け、背に冷や汗が伝った。誤魔化さなければと広夢は頭をフル回転させる。
「……っ、コンビニでパンを買って食べてから学校に戻るんだ。学校からのほうが塾は近いし、家に帰ったら緊張が解けて眠たくなるっていうか……それに、解らないところがあったら職員室に行って先生に教えてもらえるし」
先生というキーワードがあれば何も疑われないだろう。崇之という大切な時間を守りたい一心で、広夢は早口で告げた。
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