秘密のはじまり

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「まあ、確かにそうだよな。お母さん、そろそろ朝練行ってくる! メロンは夜に食べるよ」  朝食を一気に食べ終えた広樹が急いで席を立った。 「広夢、俺、先に行くわ」  傍を通った広樹が体を労うようにして肩を軽く叩いた。弟想いの優しい彼だが、意見が合うタイプではないと広夢は感じている。  どちらかと言えば、広樹は竹を割ったような性格で理路整然としている。しかも現実的だ。優柔不断な広夢からすれば理解できない部分もある。 「広樹、今日は遅いの?」  出ていく広樹を見送ろうと、母がスリッパを鳴らして玄関まで駆けていった。  広樹への期待が高い母だ。広夢への態度とは違ったところがあった。受験の失敗が尾を引いているのだろう。それが日常の態度にも出ていた。心を抉る言葉を何度も投げられてきた。  もし、次の受験が駄目だったら……そう考えるだけで恐怖すら生まれた。これ以上、母をガッカリさせたくないというのと、出来ればこのまま諦めて欲しい。そんな二重の想いが広夢にあった。それでも、母の事が嫌いかと問われたら頷けない。優しい温もりも知っているからだ。昔、テストで満点を取った日の母の喜んだ顔は鮮明に覚えている。けれど……。 (疲れるな……)  心は正直だった。早く崇之に会いたかった。
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