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誰にも触れられたくない事はある。人の心の領域に無遠慮に踏み込むのは止めよう。そう思って広夢が俯いた時、空から冷たい雫が落下してきた。雨だとわかった瞬間には一気に本降りとなり、雨音が木々の葉を大きく叩いた。
「降ってきた。広夢くん、こっちに移動しよう」
「……あっ!」
崇之に腕を掴まれた。広夢は足元に置いていた鞄を慌てて持った。腕を引かれるまま階段を昇り、小堂屋根の下に身を隠して雨から逃げたが……。
「あはは、びしょ濡れだ。大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
結局濡れてしまった。二人の髪と服は水気を多く含んでいた。
「俄雨かな。困ったね」
鉛色の雲が上空を漂っていた。夏の不安定な空模様を眺めた崇之が濡れた前髪を掻き上げていた。
「そ、そうですね」
鼓動が速まる。崇之の上半身には、濡れたシャツがぴったりと張り付いていたのだ。薄く透けた肌色にどうしても視線がいってしまう。
(崇之さんの身体、凄い……)
細身だと思っていたが、意外に筋肉はついていた。着やせするタイプなのだろうか。その隠された躯体に広夢は自然と欲情を募らせた。
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