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(何、これ?)
茫然として瞳いっぱいに映る崇之を見つめた。
(そうか、これがキスなんだ)
少しの冷静さが戻った時、崇之と口付けているとわかった。
(唇が……溶けそう……っ)
生理的な嫌悪は無い。はっきりと自覚した。燻っていた性が目覚めたと。迷いを捨てた広夢は崇之の腕へと手を這わせた。彼も応える動きで広夢の腰に腕を回して、口付けと抱擁を深くした。合わさる唇から、全身を甘く蕩かす熱が染み渡った。しかし、優しい動きはここまでだった。
「っ……んっぅ!」
広夢は喉奥で声を上げた。唾液を交換し、掻き混ぜるような動きが始まったからだ。崇之の熱い舌が上顎を舐めて頬肉を突く。咥内を舐め尽くようにして、舌がねっとりと回転した。まるで意思を持った触手のようだった。粘着質な唾液音が脳に響く中、崇之の掌が剥き出しとなった広夢の背を厭らしく撫で繰った。
「んっ、ぅん……んんぅ」
敏感な皮膚に崇之の手がしっとりと吸い付いた。腰奥が切なく反応し、性器が疼いた。精通すら迎えていない広夢には未知の感覚だった。
(これが、これが……)
崇之によって呼び覚まされた性が悦んでいる。いつの間にか激しく降り続いていた雨は嘘のように止んでいた。雲の隙間から太陽の光が差し込み、地上を淡く照らす。日差しを感知した蝉が一匹二匹と控え目に鳴き出した途端、呼応するかのように何匹もの蝉が一斉に声を上げた。
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