秘密のはじまり

16/17

2508人が本棚に入れています
本棚に追加
/366ページ
 ここは楽園だろうか。夢を見ているようだと広夢は、はじめての口付けに陶酔した。 晴れ渡った青空が広がる。蒸せる空気が雨上がりの匂いを強くした。 (どうしよう、このままじゃあ……っ)  口付けは一向に終わらない。広夢は息苦しさを感じながらも、瞳を閉じて崇之の舌の動きに必死についていくのだが――。 「んっ……ん!」  とうとう力尽きたのか、カクンと膝が折れた。唾液塗れの唇がズルリと剥がれる。崇之は崩れ落ちそうになる広夢の細い身体を抱き止めると、またしても唇をぶつけてきた。 「ん……ぅ!」  もう無理だと広夢は呻きで訴えたが、背が激しく反るほど、強く抱き締められた。唇同士がみっちりと食い込み、隙間なく重なった。 (苦し……っ)  呼吸が上手く出来ない。限界が近かった。それを察知した崇之が、やっと唇を解放した。 「はぁっ、はぁ……んっ」  唾液の糸をねっとりと引いて唇が離れた。広夢は喘ぎながらも肺に空気を送った。咽そうになるのを堪えながら、潤んだ瞳を崇之に向けた。
/366ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2508人が本棚に入れています
本棚に追加