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ここは楽園だろうか。夢を見ているようだと広夢は、はじめての口付けに陶酔した。
晴れ渡った青空が広がる。蒸せる空気が雨上がりの匂いを強くした。
(どうしよう、このままじゃあ……っ)
口付けは一向に終わらない。広夢は息苦しさを感じながらも、瞳を閉じて崇之の舌の動きに必死についていくのだが――。
「んっ……ん!」
とうとう力尽きたのか、カクンと膝が折れた。唾液塗れの唇がズルリと剥がれる。崇之は崩れ落ちそうになる広夢の細い身体を抱き止めると、またしても唇をぶつけてきた。
「ん……ぅ!」
もう無理だと広夢は呻きで訴えたが、背が激しく反るほど、強く抱き締められた。唇同士がみっちりと食い込み、隙間なく重なった。
(苦し……っ)
呼吸が上手く出来ない。限界が近かった。それを察知した崇之が、やっと唇を解放した。
「はぁっ、はぁ……んっ」
唾液の糸をねっとりと引いて唇が離れた。広夢は喘ぎながらも肺に空気を送った。咽そうになるのを堪えながら、潤んだ瞳を崇之に向けた。
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