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「崇之さん、こんにちは!」
翌日の午後。先に神社に訪れていたのは崇之だった。広夢は崇之の姿を見るや否や、全速で駆け出して石鳥居を潜った。
「そんなに慌てなくても俺は逃げないよ」
走り寄った広夢に崇之は両手を広げた。どういう意味の動作かとキョトンとしていると、急に腕を引かれた。
「……わっ!」
視界が前方にグラついた。身体は崇之の胸の中へと収まった。手にしていた学生鞄は小さな土埃を巻き上げて地面に落ちた。
「広夢くん、もう来てくれないと思った」
崇之が安堵の声でぎゅうっと抱き締めてきた。そんな彼の背に広夢は腕を回した。グレーのシャツから柔軟剤の仄かな香りが漂った。指先で掴んだシャツは汗で湿っていた。
「僕、毎日来ます。だって、崇之さんに会いたいから」
「……俺は昨日、あんな事を君にしたのに……いいの?」
どうやら崇之は罪悪感に苛まれているようだ。広夢はハッキリと言った。
「僕は自分の意思で来ました。だって僕を、楽にしてくれるんでしょう?」
崇之になら何をされてもいいと、なけなしの勇気を奮い起こして告白した。
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