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約束
夏休み、田舎の祖父母の家に遊びに行っていた時の話だ。
平成24年、世の中、電子機器で溢れかえっているというのに、祖父母の家にはテレビどころかラジオ一つない。
私はそんな生活に飽き飽きして、一人で近所の探索をしていた。
フラフラ歩いていると、何処からかラジオ放送が聞こえてくる。
FMのDJリリの面白トーク。
私はまだ6歳だったけど、母親と一緒に聞いていた懐かしの(といっても一週間ぶりなのだが)その音楽につられて石造りの鳥居をくぐり、フラフラ参道に踏み入った。
そこにはぼろぼろの社があり、境内には私の大好きな朝顔の花が咲いていた。
「いち、に、さん……きゅう、じゅう」
数を数えながら鳥居から社に向かう。
「では、ビンさんからのリクエスト、ララララマジックをお聞き下さい」
ラジオから、私の大好きなアニメ音楽が流れ始めた。マジックプリプリのオープニングのその曲は、しっかり暗唱しているのでラジオに合わせて歌いながら音のする方へ歩いて行った。
「ララララ 貴方と一緒ならば何もこわくない
ララララ 愛を貴方に」
そこには見たことのない、大きな四角の箱のようなものに、ニョッキリ角みたいな棒が刺さった物が置いてあった。音楽はそこから流れてくる。
「なあにこれ?変な箱」
私が指先でツンとその箱を触った瞬間だった。
「勝手に人様の物に触るとは躾のなっていない子供ですね」
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