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「幸司。じゃんけんは任せた」
柴崎が俺の背中を押して、親指を立てる。
俺はそれに答えてハーフラインに歩く。
相手は門脇。
「行きます、片岡先輩」
「こい! じゃんけん!」
「「ぽん!」」
俺パー。門脇チョキ。
完全なる俺の敗北だった。
「それじゃあ、ボクたちからだねぇ」
花蓮がボールを持つと、気迫が変わる。
「来るぞ、幸司」
「あぁ」
俺たちは重心を低くして、避けの体制をとる。
「避けの体制……?」
後ろから平塚の声が聞こえる。
あぁそうだ。俺と柴崎。そしてカプチーノはよく知っている。
この人の、人間離れした能力を。
「まずは……」
花蓮がボールを振りかぶりながら、柴崎にターゲットを絞った。
鋭く、狂気に満ちたような視線が柴崎に向かったのだ。
「一人っ!!」
大きなモーションでボールを手放す。
そのモーションが始まると同時に、柴崎は左に頭から飛んだ。
ギリギリ、柴崎の上空を通り過ぎるボール。
そのボールは、目視するのがやっとで、反応しきれなかった平塚の横を通りすぎ、勢いよく壁に当たると、反射して花蓮の元に帰った。
「……は?」
平塚が呆けた声を出す。
まあ、それもそのはず。
彼女は、事遊びになると人間をやめる。そんな稀有な存在なのだ。
人間のリミッターを外し、極限状態を保つのだ。
「え? ここって、こんな世界だっけ?」
「もしかしたら、お前も何かあるかもな。目覚めないだけで」
俺は花蓮から目を離さずに、平塚に言う。
「さぁて……もう一球!」
二度目の投球。
さっきよりもモーションが早い!
ロックオンされている柴崎は、俺と反対に走って飛び込む。
スライディングをして、ラインぎりぎりまで行く。
その後ろをボールが飛んで行き、よけきった。
はずだった。
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