ニ、ボールで遊ぼ

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 理由は、柴崎が投げたボールは、門脇に向かったのではない。  柴崎自身の肩あたりに浮いているのだ。  柴崎は、投球と見せかけて、投げるモーションだけを行いフェイントをかけたのだ。  そして、そのういたボールを、 「おらぁぁ!!」  カプチーノが殴り飛ばす。  勢いよく飛んで行ったボールは門脇へ向かわず、少し横に飛ぶ。 「外れた……」  そう呟いて気を緩めた門脇。  まあ、それが命取りってやつだ。  そのボールの先には、ちょうど門脇の横へと移動している俺がいるのだ。 「ほいっと」  俺は、そのままはじくようにして、門脇に当てる。  ぽふっとボールが当たると、門脇は「あぅ!?」と短く声を出して、俺を見た。 「片岡先輩……」 「まぁ、チームワークって、こういう形もあるんだよ」  カプチーノのパワーとキャッチ力、柴崎のフェイント能力があってこそのこの連携。  そして、極めつけは俺の存在感の調整。  俺は、存在感……というか、気配的なものを薄くしたり濃くしたりできる。  まあ、おそらくコツをつかめば大体の人ができると思うが、俺はそれを行うのが得意なんだ。 「ふっふーん。まだまだ、力は衰えていないみたいだねぇ」 「ボールを拾いながら花蓮はそう言った」 「口から出てますよ、片岡先輩」  うっそマジで!? クソ! めっちゃ恥ずかしい!! 「まぁ、それも今のうちってね!?」  花蓮が力強く投球する。  狙いは柴崎だったが、柴崎は滑り込むことで回避。  そして、真後ろにいたカプチーノがキャッチした。 「チームワークを舐めちゃいけねぇぜ! 相沢さん!」  そのまま、大きく振りかぶり投球する。
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