一、将棋で遊ぼ

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「あのー。今日は何をするんでしょう?」 俺の自己紹介未遂をあっけなく流した門脇の言葉に、俺と平塚は腕を組んで考える。 暇部。それは、放課後など暇な時間を有効的に使い、暇をつぶすことによって青春を謳歌しようかと考える部活だ。 そんなこの部活でやれることは、そう多くはない。 なぜなら、やることやできることが多ければ、暇なんて存在しないからだ。 逆を返せば、やることもなければできることも少ないような奴らなのだ。俺たちは。 だから、こうして何をするかは考えなければならない。 俺が考え付くのはもう人生ゲームくらいなんだが、それは最近三週間近くずっとやっている。 となれば、 「将棋しよう」 俺の発言に、平塚と門脇が冷たい目で見てくる。 「知ってますか、片岡さん。将棋って、二人用なんです」 「片岡センパイがそこまでヴァカなんて、しんじらんねー」 「おい二人とも。何か勘違いをしていないか?」 俺の言葉に、冷たい目と言葉を放っていた二人が正常になり俺を見据える。 そこで俺はにやりと笑って見せた。 「俺たちはまだ、全員じゃない」 そう、暇部にはまだメンバーがいる! 俺がそう宣言したと同時に、部室のドアが勢いよく開いた。 「星涼高校三年二組、暇部所属。茶髪のオールバックに左のピアス、赤い目が印象的なこの俺様、カプチーノ・森崎(もりざき)。参上。ちなみにネクタイはつけず、ブレザーのボタンはあけっぱ。かっこいいだろ?」 「同じく、星涼高校残念憎み……間違えた。三年二組。柴崎亮(しばざきりょう)。きっちり着こなした制服に、鮮やかな緑の七三分け。そして、煌く銀縁眼鏡を着用し、その奥に光る空のように蒼い瞳を持っている」 出てくるなり、いきなり自己紹介を始めたこの二人。カプチーノ・森崎、通称カプチーノと、柴崎亮、通称リーマンが残りのメンバーだ。リーマンはあまり使わないが。 一応言っておくと、俺も三年二組。だから、平塚と門脇は後輩だ。さらに言うなら、平塚は一年。つまり、下っ端になる。
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