一、将棋で遊ぼ

6/11
前へ
/31ページ
次へ
「ちょっと待て! 俺様はしらねぇぞ!」 「良いですから、そんないちいち説明するとか。知っている人はほんとに苦行ですよ?」 平塚がため息混じりにそういうと、カプチーノは拳を震わせて立ち上がる。 「おい。じゃあ、本当に知らない奴はどうすんだよ!」 少し怒気を含んだ声に臆することなく、平塚は対抗するように立ち上がり、口を開く。 「そんなの、グー何とか先生に聞けばいいのですよ! げんじゃいは情報化社会です!」 ……何事もなかったかのように進めてるが、今噛んだよな? げんじゃいって言ったぞ。 俺が気にしたことを回りは気にせず、柴崎は肩を竦めて、俺は椅子にもたれながら二人の行く末を見守ろうとしていた。 しかし、俺の隣に座っている門脇は違った。 門脇は、静かに立ち上がると、二人に向かって大きな声を出した。 「メタ発言はダメですーーー!」 その声に、その言葉に一瞬周りは黙り込んだ。 そして、平塚は意を決したかのように門脇に言う。 「楓ちゃん、その発言も割りとメタい」 「はぅ!?」 まぁ、メタと自覚することもまたメタいのかも知れない。 でも、メタはしょうがないんじゃないか? だって、そういうコンセプトの話でしょ? これ。 小説の世界と自覚している世界なのに、それを最大限に活用しなくてどうするのか。 「いいから、早くやろうぜー」 カプチーノの声に、俺と柴崎は肩を落としながら将棋盤の近くに座りなおす。 「今から、俺と柴崎でやってみせるから、それ見て学べ」 「実況は私、平塚礼湖、解説に門脇楓さんをお招きしております。今日はよろしくお願いします」 「あ、はい。よろしくお願いします」 急に二人並んですわり、実況に入ろうとしている。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加