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「あぁ、これか。俺のお守り。新しくなったばっかりだから、まだちょっと匂いがキツイかもな」
「お守り?」
見せられた袋からはまたブラックの薫りが広がって甘い匂いを覆い隠す。
「やっぱりあなた、Ωなんだ」
「あ?悪いかよ?お前もそうだろ?」
「うん。僕、男性Ωなんて自分以外じゃ初めて見た」
「まぁ、絶対数が少ないからな。俺も会うのはお前が初めてだよ」
同じΩ、しかも数の少ない男性Ωというのが知れて、よく分からない安堵感が生まれる。
なんとなく彼が悪い人だとは思えなかった。
「僕はアジェ・ド・カルネ。何がどうして今こうなっているのかよく分からないんだけど、お兄さんは事情を知ってるの?」
「あ?俺が知る訳ないだろ。俺はただの通りすがりだぞ」
「あぁ、そうなんだ…」
「まぁ、とりあえず帰るぞ、エディが首を長くして待ってる」
「お兄さんエディと仲良いの?」
男性といえどΩはΩ。αであるエディに親しいΩがいるのは少し気分が悪かった。
頭も体も疲れているからか、考えてしまうのは妙な対抗心。
彼が自分以外のΩなど眼中にないと分かっているのに、それでもその嫉妬心は止めることが出来なかった。
「あ?なんでだ?別に仲良くなんかない。そもそも喋ったのだって今日が初めてだ」
「じゃあなんでエディって呼ぶの?」
「それ、あいつの名前だろ?」
「エディの本名はエドワード・ラング、エディは愛称だよ」
「なんだ、そうなのか。ブラックも領主もそう呼んでたから、そのまま名前だと思ってた。まぁ、でもエドワードよりエディの方が呼びやすくていいんじゃねぇ?」
なんだか何でもない風にそんな事を言われて少しもやっとする。
エドワードをエディと呼んでいいのは近しい者だけだと思っているのに、この男はなんだかずいぶん馴れ馴れしい。
それでもその呼び名をエディが許したのなら、自分にとやかく言う権利もない。
もやっとした心のままに僕は瞳を逸らした。
さぁ行くぞと手を差し出されてそちらを向けば、その人の腕の細さに驚いた。
「あなたはこんな細腕であの人達と戦ってたの?」
「え?あぁ」
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