君が僕へと辿り着く道程

2/36
389人が本棚に入れています
本棚に追加
/593ページ
俺は書き置き1つ残して家出したアジェを追いかけて「アジェを追いかけて旅に出ます!」と領主に告げてルーンの町を飛び出した… いや、飛び出したかったのだが、何故か今俺はファルス王国首都イリヤへ向かう道程で馬上の人となっている。 まったくもって不本意だ。 どうにも不機嫌を露にした顔付きで道行く人を怖がらせようと、これは俺の責任ではないはずだ。 俺の隣では涼しげな顔で1人の騎士がやはり馬を走らせていて、どうにも当り散らしたいのだがこの人物、人の話を聞いているのかいないのか表情ひとつ変わらない。 彼の名はクロード・マイラー。 ファルス国王の使者を名乗る彼がカルネ領主の館に現れたのは、アジェが家出をしたまさにその日、そして俺がアジェを追いかけ飛び出そうとしていたまさにそんなタイミングだった。 「私、ファルス国王の使いで参りましたクロード・マイラーと申します。エドワード・ラング様及びアジェ・ド・カルネ様を国王の下にお連れするようにと仰せつかっているのですが、あなたはエドワード様ですか?それともアジェ様ですか?」 荷物を掴んで館を出ようとしたその時、領主様に呼ばれ行ってみれば、そこには形容しがたいほど綺麗な顔立ちをした男が立っていた。 ふわふわとした栗色の髪に涼やかな目元、黙って立っていれば等身大の人形が立っているのではないかと思うほどの美貌の持ち主、それがクロードだった。 「私はエドワード・ラング。名指しで国王に呼び出されるような事をした記憶はないのですが、一体何の御用ですか?」 今は一刻を争う時だ、用事ならさっさと済ませてアジェの後を追いたいのに、彼はそんな事は知りもしないので涼しげな表情だ。 「アジェ・ド・カルネ様はいらっしゃらないのですか?」 「アジェ様は外出中です、私も後を追いたいので、用件は手短にお願いしたいのですが…」 「これは困りましたね、私は2人に用があったのですが、アジェ様はいつお戻りになられますか?」
/593ページ

最初のコメントを投稿しよう!