お誕生日

1/6
59人が本棚に入れています
本棚に追加
/466ページ

お誕生日

 流行りの音楽と、クラシックが交互に流れる、不思議な空間。  ちゃぷんと水の跳ねる音がして、重なり合っていた唇が、やっと離れた。  そこでやっと、お互いにすぅっと、深呼吸のように息をする。 「今日の愛美(まなみ)も、最高に可愛かった。さすが俺の彼女」 「うん」  ホテルの広い広い湯船につかり、後ろから私を抱きしめる(けん)は、大きな手で私の髪をなでる。  子供をあやすように、そっと優しく、何度もなでてくれる。  そんなことが私は素直に嬉しくて、ちょっと恥ずかしくて、小さく頷いたっきり、健に体を預けて微笑んだ。
/466ページ

最初のコメントを投稿しよう!