出会い 万里side

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会社の会議が予想外に長引き、パーティー会場のホテルについたのはパーティーが始まってから一時間も遅れてのことだった。会議中、隣で椎名がイライラしていたがどうしようもなかった。 ひどく疲れた様子の椎名に声をかける。 「一時間ほどで商談は終わらせるから、その後は先に帰ってもいいぞ。確かそろそろ奥さんヒートだろ?もうヒート休暇にしていいから。」 椎名はアルファで番持ちだ。 二人は結婚していて、椎名はオメガの奥さんを溺愛している。 今、多くの企業にはヒート休暇と呼ばれるものがあってオメガや番のアルファが働きやすくなっている。オメガのヒート期間の前後あわせて最大10日の休みをとることができる。 椎名は毎回その休暇を利用している。 「いや、でも」 「いいから。俺はなんとかなる。帰ってやれ。」 「ありがとうございます。そうさせていただきます。」 椎名が申し訳なさそうにしているが、あえて無視した。自分に都合のいいものは最大限利用すればいい。 会場の扉の前に立つと中からざわざわと話し声が聞こえる。 自分の身だしなみをさっと確認してから扉を開けた。 扉を開けると、会場のざわめきが一気に大きくなる。扉の外が薄暗かったからか、光を眩しく感じて目を細めた。 椎名がいち早く目当ての人物を見つけたらしい。 「社長、あちらにいらっしゃいます。」 目で指し示された方向に顔を向ける。 と、どこからかふっと甘い匂いが漂ってきた。 スイーツの匂いじゃないな。石鹸の清潔な匂い。だが…とてつもなく甘い。 ―この匂いは…オメガか? そう感じた瞬間心臓がどくっと脈打った。 広い会場の中、一人の青年だけがスポットライトがあったっているかのようにはっきりと見えた。黒髪で片側だけ編み込みにされた髪型の青年だった。 突然、青年が体の力が抜けたかのようにへたりこむ。気づけば俺は引き寄せられるようにその青年に向かって歩いていた。 青年に近づくたびに甘い匂いが強くなる。体の奥底からざわざわと何か得体のしれないものが込み上げてくるような感覚を覚える。最後は随分早足になりながら青年の前までたどり着いた。服が汚れるなど最早どうでもよく、床に膝をつく。いっそう甘い匂いがぶわっと広がって俺の感覚を刺激する。無意識に青年の頬に手を伸ばした。 頬に触れると青年が顔をあげる。 そして、目が合う。
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