ベンディング・マシン

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はーっと吐き出された彼女の溜め息が、自動販売機のライトに照らされている。その小さく丸い水滴は、ゆっくりと昇って闇の中に消えていった。 「あなたって、変わってる。」 「きみだって、そうだよ。」 僕はその最後の一粒が夜に吸い込まれるのを見届けてからそういった。 「なぜ?」 「だって僕と喋ってる。」 ふっと彼女の頬が緩む。 「その論文は、何か実生活に役立ったのかしら。」 「君と今こうして話せてる。」 「上手なのね。」 「でも慣れてる訳じゃない。」 彼女は一瞬だけ目を閉じ、そして笑った。 「今日の曜日と時間を覚えておいて。」 それから、といって出された左手にたじろぎしたが、すぐに気づき110円を置いた。 爪の縁まで丁寧に塗られた薄い桃色のネイルは、その白く淡い肌にとてもよく似合っていた。 ボタンを押して出てきたそれを両手に転がし、財布から10円玉を取り出して僕に手渡した。少しずつ、その手がピンクの色を取り戻していく。小さな花が咲く瞬間と、とてもよく似ていた。 「貧乏なの。でも週に1回10円なら、どうにかして払えるわ。」 「無利子にしますよ。」 「ありがとう。」 「その代わり、1円ずつがいい。」 「そう?」 「集めてるんだ。」 「何のために?」 「これから考えるよ。」
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