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きこえない音
その夜は、ねえ、静かじゃない?静かだな。という互いの心の声さえ聴こえそうなほど静かな夜だった
「ねえ。」
「ん?」
「私ね、一昨日見た夢を思い出したの。」
「へえ。」
「不思議よね。昨日見たのは思い出せないのに、一昨日のははっきりと覚えてるの。」
「どんな?」
「雪の溶ける音を聴いたわ。」
雪の溶ける音、と僕は繰り返した。それがどんな風に聴こえるのか想像してみたが、さっぱり分からなかった。
山形に盛られたかき氷に、とろとろとした蜜がかけられ、その真っ赤な蜜が氷を巻き込みながら山肌を下っていく――せいぜい、その音を拾うのが限界だった。
けれど、彼女にはもっと特別な音が聴こえているのだろうということだけははっきりと分かった。
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