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実際のところ、自分は運が良かっただけに過ぎないのだろう。
相手が悪ければ暴力の衝突が起こっていたかもしれないし、そうなれば数の不利を覆すことはできなかった。もしくは、不運が始まるのはこれからの話で、自分は明日の下校途中にでも彼らの報復によって身の程を思い知らされるのかもしれない。
だが、それがどうしたというのだ。暴力、奪い合い、破壊。それらが普段利用している通学路から一つ逸れたところに転がっている。
こんな素晴らしい体験は、他のどんな場所でも味わうことはできない……唯史はすでに、危うい非日常の魅力に取り憑かれてしまっていた。
その夜、唯史は病院で目覚めて以来もっとも安らかで、心地の良い眠りにつくことができた。
以降も唯史は、学校の帰りに夜の街に繰り出し、他人に迷惑を掛けている者達に声を掛けて暴力を振るった。
一歩間違えば自分がやられるかもしれない。見る人からすれば自分も同じ悪人なのかもしれない。
しかし、彼の中にあるどんな倫理も、どんな良心も、それを止めさせるほどの強制力はなかった。
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