二章 正義という呪い

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 「誰、その子」  背中の方から声が聞こえてくる。追い付いてきた千鶴が追い付いてきて、冷たい視線を注いでいた。  「もしかして、唯史の夜遊びはその子と関係してるの?」  「別に、夜遊びしてるわけじゃない」  校門で待ち受けていた例の女は何も言わず、唯史と千鶴の顔を交互に見比べている。  「夜遊びだよ。どこへ行くのかも、いつ帰ってくるかも伝えずに出かけて……そう表現する以外にないじゃない。おばさんも悠未ちゃんも心配してるの知ってるんでしょ?」  「……関係ないだろ」  「あるよ。昔からこうやって、ずっとお節介焼いてきたんだもん。たとえ前みたいな……そういう関係じゃなくても、あたしはこれまでと同じように……」  「だから、関係ないんだって」  唯史は語調を強めて繰り返す。  「それは以前の唯史の話だ。家族みたいに仲良くしてたのは俺じゃない。お前が好きだったのも俺じゃない。……そもそも俺は、お前のことなんて知らないんだよ」  「っ…………」  千鶴は息を呑んで眼を見開いた。次の瞬間、彼女の瞳からは大粒の涙がぽろぽろと溢れ始める。  その後唯史に背を向けると、駆け出してその場から去っていった。
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