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唯史は彼らに対して何も告げることなく、背を向けてその場から立ち去った。
他の三人は誰一人としてその場から動こうとしない。角を曲がる直前に後ろを振り向いてみると、地面に伏せた男に残りの二人が駆け寄っていくのが見えた。
家路を向かう唯史の口元からは笑みが漏れる。彼らの態度、反応があまりに可笑しかったためだ。
自分に対して同じことをしようとしていたはずなのに、やり返されれば驚き、恐怖する。あまりに滑稽で情けない姿だ。
そして何より記憶に残っているのは、人を殴り飛ばした時のあの感触だ。溜め込んできた欲望を解放する快感、自分の全力を他人にぶつける高揚感……記憶を持たない唯史にとって、それらは初めての経験だった。
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