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そんなときに話し掛けてきたのが大善(だいぜん)だった。大善は生まれた時からの幼馴染で、度が過ぎるほどのお人好しの性格が災いして、損ばかりしている男の子。 昔、穂乃果が拾ってきた捨て猫を自分の家では飼うことを許されないからって大善に押し付けたことがあった。 ペット禁止のマンションの隣同士。当然大善の家も飼うことが許されるわけもなかった。夜になって子猫の泣き声が穂乃果の部屋にも漏れてきて、それが大善のママの怒鳴り声でかき消され、静かになったと思ったら二度と子猫の泣き声は聞こえなかった。 翌日、いつも一緒に登校していた大善は先に家を出てしまっていた。学校でも避けられて、穂乃果は怒ってるんだと思った。 怒られたくないからって押し付けた穂乃果は、謝らなきゃって思ったまま下校のチャイムを迎えてしまった。自分が悪いってわかっているのに、どうしても自分から謝ることが出来ない。 「ごめんね」 はじめて帰る一人きりの帰り道。地面ばかり見ながら歩いていたのは、沈んだ気持ちの表れで、家の前で待っていた大善のその言葉でようやく顔を上げた。 大善が穂乃果を避けていたのは、子猫を守れなかったことが申し訳なかったからだった。大善は反対していたのに、始めからこうなるってわかっていて注意してくれていたのに、穂乃果のわがままを最後は聞いていくれて、全部自分が悪かったってことにしてくれる。そうして穂乃果はようやく素直になれた。 「ごめんね」
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