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それは4年も前の話。お互いに体は大きくなったけど、穂乃果の性格は相変わらずで、大善の優しさに寄りかかるのは直っていなかった。 大善が美鈴からの相談を受けて穂乃果に会いに来た。夕食も食べずに自分の部屋で、まだ20時だというのに電気も付けずにベッドに横たわっていた。 マンションの裏が大型のスーパーで、その赤っぽい照明が靄のように部屋を薄く照らす。目を開いたままの穂乃果が壁に映る大善の人影を捕えた。穂乃果は驚くこともなく、ベランダへ振り向くこともせず部屋への侵入を許した。窓の鍵はいつも閉めていない。それは大善がいつでも入ってこられるように。 「美鈴から話は聞いた。あいつも反省しているみたいだよ」 「だったら何で謝りに来ないの?」 「会わせる顔がないんだって」 「じゃあ私はどうすればいいの?」 「許さなくていいって、無視してくれていいって、本当にごめんだって」 「何それ・・・何で美鈴が勝手に断ち切ってんの?」 美鈴がチョコを捨てたのは同じ相手を好きだったから。その気持ちを穂乃果に言うことも出来なくて、相手の男の子にも言えなかった。自分のしたことが最低だってわかっていたし、後悔だってしている。穂乃果のチョコを捨てたところで相手が自分になびくわけでもない。穂乃果からチョコを奪ってから悩みに悩んで、ゴミ箱へ捨てた。 結局、穂乃果と結ばれることが許せなかった。今は罪悪感に苦しんで逃れるために穂乃果との関係を投げ捨てた。 穂乃果としてはチョコを見つけたことを言うつもりはなかった。美鈴が自分の口から打ち明けてくれるのを待って、謝ってくれさえすれば許そうと思っていた。実際に心から許せるのかはわからなかったけど、そうしようと心に決めていた。それほど美鈴を失いたくなかったのだ。 穂乃果は行き場を失った怒りと悲しみを大善にぶつけた。枕を投げつけて、布団を投げつけて、美鈴への怒りを大善に転換した。 「何で大善が言うの? 大善何にも関係ないじゃん! 勝手に人のことに口出さないでよ」 大善は黙って聞いてくれていた。穂乃果が疲れ切って言い終えるまで待ってくれていた。泣きじゃくってその涙が枯れるまでそばにいてくれていた。 「ごめんね」 そう言って全部を受け止めてくれた。私にとって最悪のバレンタインは、大善によって支えられた。
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