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耐えきれなくなって、先に逃げ出したのはモモだった。穂乃果は失恋と同時に、また親友を失ったのだと思った。モモがお金を払っていないなって考えられるほど不思議と冷静だった。モモとの楽しかった時間が夢で、それが覚めたのだと思った。 帰宅しても、モモからの連絡は来なかった。自分の部屋のベッドに横たわってスマホを握り締めながら穂乃果は待っていた。モモを失いたくなかったから。だけど、自分から折れるほど広い心は持っていなかった。 美鈴のことを思い出す穂乃果。あの時はベランダから現れた大善に救われた。穂乃果はベランダに背を向けて、赤く霞むスーパーの照明を映す部屋の壁を見つめながら耳をそばだてていた。 大善が現れたのは1時間後。21時を過ぎていたというのに制服姿のままだった。 「モモから聞いたよ」 大善のその一言で制服姿のまま現れた理由が穂乃果にはわかった。モモはファミレスから出ていった後に大善のもとへ向かったのだ。 モモにとって大善は兄のような存在で、実際にお兄ちゃんと呼んだりもする。冬の体育で寒かった日に大善のジャージを羽織らせてもらったり、全校集会で貧血で座り込んでしまった時も注目が集まる中で大善の名前を呼んで、ためらうことなく負ぶってもらっていた。穂乃果も大善には甘える体質ではあるけど、モモのように素直にはいかなかった。 「私は何にも悪くないからね」 穂乃果は大善がモモの味方になるのを恐れて、モモが悪いんだってことを知ってほしかった。そんなことはちゃんと経緯を説明すれば大善ならわかってくれたにもかかわらず、モモを貶める言い方をしてしまった。 「モモもモモなりに苦しんでたんだよ。穂乃果に申し訳ないからって、ちゃんと先輩とは距離をとってたんだよ」 「普通にLINEしてんの見たんだけど」 「それは先輩の方からしてきたんだよ」 「断ればいいじゃん」 「モモに出来るわけないだろ。わかるだろ?」 「わかるけど」 「悪いのは先輩だよ。二人とLINEしてるのが間違ってるんだよ」 「そうだけど」 「仲直りしなよ。美鈴のときみたいに一人になりたくないだろ?」 「なりたくなくったって、もう無理なの」 「どうして?」 「だって、モモも先輩が好きなんでしょ?」
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