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あのLINEのやり取りを見ていれば、モモの気持ちがどうであるかんてわかりきっていた。バレてしまった以上、モモだってもうブレーキはかけられない。モモからの連絡が来ないことがそれを予感させ、大善が穂乃果から歩み寄るように導こうとしているのがその証拠だった。
アイスや映画は譲ってくれたのに先輩のこと譲れないのだろう。冗談で言ったことが本当になってしまった、たとえ、穂乃果から歩み寄ったとしても、今まで通りの仲ではいられない。モモを見れば先輩が目に浮かぶだろうし、それを見なかったことにして笑っていられるほど神経は図太くない。
あの青ざめたモモの顔が浮かんだ。髪の長さを揃え、流した前髪だけを対にして、二人で双子を気取って笑い合っていた。先輩がLINEで教えてくれたタイプが自分と重なっていたのも頷けた。浮かれていた自分が空しくって、早く髪形を変えたくて、穂乃果は前髪を手でくしゃくしゃにした。
「無理。笑えない。出来ないよ」
ベッドの上に座り込んでいた穂乃果を照らす赤い照明が消えた。スーパーの営業が終了したのだ。部屋の中を照らすのは月明かり、薄暗くって穂乃果のこぼした涙はひっそりと紛れてしまった。
「出来るよ」
そう答えた大善。その根拠は自分自身にあった。大善には好きな人がいて、その好きな人は別の人を好きだという。大善はその相手に対して自分の想いを押し殺してこれた。平静を取り繕うなんて大した問題ではないって言った。そして、その相手が誰なのかも教えてくれた。
「モモだよ」
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