最後の晩餐

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「寒い寒い・・。おくつろぎのところ申し訳ありません」 枯草(かれくさ)(まと)った男が腰を低くして家の中に入ってきた。 「おお、タガメ。雪の中ご苦労だな」 タガメは保食(うけもち)の言葉に軽く会釈(えしゃく)を返した。 「ご報告です。月読(つくよみ)様がいらっしゃいまして、シダの家の横の空き家にお通ししております」 「月読様?あの月読様か?それもこんな雪の日に?」 保食は長弓(ながゆみ)山脈一帯を(おさ)める王だ。 普段は狩や漁などして一日を過ごすのだが、雪が降る日など天気が悪い日は危険が多いため、大抵(たいてい)は家族で過ごすようにしていた。 特に雪の日は危険が多い。雪下に何が(ひそ)んでいるかわからないため、毒虫や植物の(とげ)で怪我をしてしまう恐れがある。 「わかった、すぐ参ろう。シダの家の横と言ったな。わしが参るまで失礼ないように」 「はい、承知しました」 タガメはまた軽く会釈を返し、家を出た。
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