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取調官は子どもを諭すように言った。
「俺のせいです。日がなネット漬けになってるなら、ニュースぐらいチェックしろよ」
口ではこう言って改悛のそぶりを見せたが、俺の気持ちは煮え切らない。
だって、ストーカードローンがチェルシーを歯牙にかけるなんて、誰が信じる。
「複数犯によると思われたが単独犯だ。進化して、それほどの仕事量をこなせるんだよ」
「でも……でも……何でチェルシーなんか好きになったんだ」
「そりゃ同じデリバリーの現場で働いてりゃ惚れもするだろうよ」
「殺さなくってもいいじゃないか!」
「コーヒーはいつもは奥さんが頼んでいたんだよな?」
「ああそうですよ! チェルシーがいないから、しかたなく俺が……」
「奴にしてみりゃ、お前の心が彼女から離れたと判断した。彼女は奴のお得意様だったんだからな」
「それがどうしたっていうんだ! 機械はごまんとある。どれを使おうが勝手だろう」
「お前は出勤簿にアクセスしたよな。妻を気遣う気持ちがまだ残っている、と奴は判断した」
「機械の恋心なんか推し量れるかよ!」
「愛情が揺らいでいる。これはチャンスだと結論付けた」
「それで帰宅途中のチェルシーを口説いたって? 機械が? 馬鹿馬鹿しい」
俺は一笑に付した。
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