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その日、父と母と八重と銀二は台所に集まっていた。
「銀二。今日、これが届いたそうだ。八重が受け取った」
と言って、父は机の上に召集令状を置いた。
「おまえは、大日本帝国の兵隊となった。お国の為に励みなさい」
母は泣き出した。
「泣くではない。日本国民としての誉れであろう」
銀二は召集令状を手にもとらず、何も言わず、召集令状を見つめていた。
「銀二・・・」
八重は銀二の横顔を覗きこみ心配そうに呼んだ。
「俺は・・・俺は戦争などには行きとうない! 」
「なんと・・・」
「何のための戦争だぁ! 人と人が殺し合うことになんの意味がある」
「おまえという奴はぁ! 天皇陛下の命を受けた兵役ぞぉ! 」
「俺は天皇陛下の為に命は捧げられん! 俺が命を捧げられるのは、お父さんやお母さん、姉さんや銀蔵、家族の為だけだぁ! 」
「あーーー」
母は声をだして泣き崩れた。
「立派な志である。では、家族の為に戦争に行ってくれ。おまえの言う通りかもしれん。しかし、お国が進む道には従わねばならん」
「・・・分かりました。精一杯お勤めを果たしましょう」
八重は銀二の横顔を見つめた。
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