プロローグ

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今日も日差しが強い日だった。 タッタッタッタッタ 川を越えて、お墓を右手にけもの道を越えて走ってくる女の子がいた。 春子14歳。 春子が走った先から、坂を上がった所に、20代後半ぐらいの女性が洗濯をしていた。 洗濯と言っても、今のように洗濯機があるわけではない。 大きなたらいの中に衣類をいれて、石けんをつけて、洗濯板で洗っている。 この洗濯をしている女性は八重と言って、銀二の姉である。 「あら、春ちゃん」 「八重さん! 銀二さんは、銀二さんは帰ってきたかぁ? 」 「まだ、帰ってきてないねぇ」 「もう、終戦から2週間ぐらいは過ぎてるから、そろそろ呉から戻るころだと思うけどねぇ~ 」 と、銀二の母が玄関口で話している。 「それって・・・もう・・・グスン・・・」 「ダメよ。春ちゃん。希望だけは捨てちゃダメよ」 そこに、ボロボロの兵隊さんがやってきた。 この人は、銀二と同じ、海兵隊に所属していた清である。 銀二と清は、この町から一緒に戦争に向かったのである。 「清くん・・清くんじゃないの! 無事でよかったわぁ」 「八重さん。すまない。銀二は・・銀二は・・・・」 「うわーーー 」 と春子は泣き出した。
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