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「銀二の乗った軍艦伊勢は、呉の沖合で、傾いて転覆していた。そこにアメリカの戦闘機が現れて、最後の砲撃を行ったが、そのまま沈没した。銀二は、呉の海に沈んだんだ・・・」
「何と言う事・・・」
と母は涙を流し、頭を抱えた。
「そんなのおかしい! 銀二さんは泳ぐことが得意だったんだ! だからきっと、泳いで陸まで・・・」
と春子は目いっぱいの涙をうかべて話している。
「俺もそう思ったよ。だから、呉の港で銀二を探した。でも見つからなかったんだ。信じたくないけど・・・」
「そうでしたか・・・銀二は、お国の為に、見事な戦死をしたのですねぇ。誇らしい事じゃないですかぁ」
と八重は今にも泣き出しそうな思いを抑えて、冷静に話した。
「そうなのかい。あいつほど・・・家族思いの子はいなかったからねぇ・・・」
と父が話した。
「あーそうですねぇ。銀二はいつも家族の事を考えていました。みんなから弱虫とか、非国民とか言われても、俺は家族の元に帰るんだと」
「まーあの子らしいことです」
「・・・銀二・・・・」
八重は銀二との事を思い出していた。
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