そして戦争へ

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そして戦争へ

1941年(昭和16年)8月 桐川では、たくさんの人が泳ぎを楽しんでいる。 その中でもひときわ目立つのは銀二だった。 「おまえ、もう向こう岸まで何周したんだよ? 」 と陸地で休憩している清が話しかけた。 「30周してきた」 「30周って! 往復で500mだから、15kmぐらい泳いでるってことだがねぇ! 」 「そうやぁ」 「そうやぁって軽く言とりゃーすけど」 ブクブク 「あの人、溺れてわよ! 」 「だれかぁー助けて! 」 「銀二! 」 銀二は、川に飛び込み、助けにいった。 溺れた人の所まで、すぐにたどり着き、抱き上げた。 「おい大丈夫かぁ! 」 銀二の呼びかけにかすかに答えた。 「ううぇ。ゴホンゴホン」 「息はある。待ってろ! 今岸まで連れてってやるからなぁ」 銀二はその人を抱いて、岸までたどり着いた。 「おい! 大丈夫かぁ!」 「だ・・・だ・・大丈夫・・・」 「あんばよ~いかないかん! 」 「お・・・おう」 そこに小学生の女の子が走ってくる。春子である。 「銀二さん! 帰ろうよ! 」 「春子かぁ。よし家に帰ろうかぁ」
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