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空を覆った鈍色の雲は、いつの間にか黒く染まっていた。
ホームルームが終わると、生徒たちは足早に学校から離れていく。
それに紛れたかったが、そうもいかず。
教室で5時限目のノートを友人に借りて写していた。
終わる頃には教室は無人で。
借りたノートを友人の机に仕舞って、部屋を後にする。
早く帰ろう。
そんな気持ちを察したのか、神様が意地悪をする。
黒く塗り潰された空が、泣き出した。
募った不安が現実となり、ただ1人昇降口で立ち尽くす。
不意に、後ろから足音が聞こえてくる。
あー、降ってきちゃったかぁ。
などと言いながら、壁に背を預ける。
同じ境遇が、もう1人。
そう思うと、失礼ながら気持ちが少し軽くなった。
2人とも、ツイてないね。
天気予報、外れたね。
2人で他愛ない言葉を交わして如何程か。
数十分だったかもしれない。
十数分かもしれない。
その曖昧な時間で空は泣き止み、笑顔を見せた。
夕暮れ時の、眩しい光。
逆光で隣の人の顔も分からなくなった。
黄昏時とはよく言ったものだ。
雨、上がったね。
隣の影が、微笑んだ。
心の空に晴れ間が差す。
その影は別れを告げて去っていった。
空が晴れて嬉しいはずなのに。
心の空は再び鈍色の雲が太陽を隠していた。
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