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この関係を壊したくないけれど、もっと心身ともに近付きたい。
包まずに言えば、ヤリたい。泣かせたい。
その機会を虎視眈々と狙っている。
「あれ? 手のとこ、血が出てるけどまた何かしたの?」
「あー、殴りどこをミスっただけだ」
血の滲む手の甲を見て蒼は痛ましそうに顔を歪めた。
健太は舌打ちをすると乱暴に手をポケットに突っ込む。
「うちに寄ってってよ。消毒くらいならできるから」
「別にいい」
「おばさんに言いつけるよ」
健太がわかりやすく顔を顰め、観念して頷くのはすぐだった。
不良ぶっているが素直なのは熟知している。
半ば無理やり家に連れ込み、健太のために備えていた救急セットで手当てをする。その間にも蒼の頭の中はどう健太を口説こうかでいっぱいだった。
「器用だな」
「健太のおかげでね」
「頼んでないだろ」
「じゃあ怪我しないでよね」
――仕込んでみようかなあ。
救急セットをしまいながら、コーヒーの支度をする。
勿論健太にはまだ帰らないようにいい置いてある。
「今日は母さん遅いんだよ」
「寂しいなんて言うなよ?」
「えー。寂しいから構ってよ」
二人で笑いながら冗談を交わす。だが蒼の心臓は今にも破裂しそうなくらい高鳴っていた。
――媚薬、なんて胡散臭いけど効くのかな。
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