5

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

5

 こうして、天国での生活が始まった。  結局、天国においても青年はシステムエンジニアの職を得て、改元に関するシステム改修に多忙を極めた。ようやく得られた給料も、多大な天国税が徴収され、余ったわずかな手取りで生活費をまかない、せっかくの休日も、近所の清掃やら、会社の運動会やら煩わしいイベントに駆り出され、ささやかな余暇を楽しむ余地もない。  死者の世界に来た直後はあれほど生き生きしていた青年だったが、徐々に生前の時のように表情が消えていった。華やかだったSNSもいつしか当たり障りのないことしか書くことがなくなり、コメントも滅多につかなくなった。ソーシャルゲームのギルドの成績もどんどん落ちている。動画投稿も今やする気が起こらない。  結局、天国でも様々なしがらみがあって、生きていた頃と変わらない。唯一天国らしい所といえば、残業が生前よりは少ないことぐらいか。  変わらないのは自分なのか、それとも世界の方なのか? と、青年は嘆くのだった。  そんなある日、何気なしにSNSを眺めていると、一通のメッセージに目が止まった。 〈もうここから、消えてしまいたい……〉     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!