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「私は死者の世界の官吏です。貴方をお迎えにやって来ました」 「死者の世界!」青年は悲鳴のような声で言った。「まさか僕は死んだの?」  赤鬼は小さく頷いた。「ええ、今さっき。布団の上で眠るように」 「そ、そんな……」  会社で仕事をして、電車に乗って、食事をして、シャワーを浴びて、ついさっきまで普通に暮らしていたというのに。あまりに突然のことに、青年は頭の中が真っ白になってしまった。 「驚くお気持ちはわかります。最近多いんですよ。貴方のように若くして突然亡くなる人」赤鬼は手にしていた資料をめくりながら、特に哀れむような様子もなく淡々とした口調で言った。「新手の病気なのかそれともストレスなのか、私には分かりかねますが。ですが、事実は事実ですので、受け入れてください」 「……受け入れろって、言われても」  青年はやっぱりこれは夢じゃないかと思い、ほおをつねってみた。  痛くなかった。  やっぱり! と青年は思ったが、赤鬼は首を振った。     
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