1人が本棚に入れています
本棚に追加
2
青年は、自分の死を完全に受け入れられたわけではなかったが、このだだっ広い空間に居続けるわけにもいかない。しぶしぶといった様子で彼は赤鬼についていった。
前を行く赤鬼が言った。
「死者の世界では、まず裁判を受けていただきます」
「裁判?」
「ええ、死者の世界のどこで暮らすかを決める裁判です。ご存知かと思いますが、ここは大きく、天国と地獄の二つに分かれます」
「もしかして、閻魔大王の裁きってやつ? 生前悪いことした奴は舌を抜かれて地獄へ落とされるんだっけ?」
青年の背筋はぶるりと震えた。もし自分が地獄へ落ちて、苦しい思いをさせられたらどうしよう、と怖くなった。
「おっと、不安にさせてしまったようですね。でもご安心ください」赤鬼は快活に笑った。「裁判と言っても形式的なもので、ほとんどの人間は天国行きです。貴方の履歴を簡単に確認させていただきました。ご両親より早く亡くなってしまった部分で少し減点はありますが、それ以外は全く問題ありません。真面目で品行方正、犯罪歴も無し、裁判もすぐに終わるでしょう」
「そ、そうですか」
青年はほっと胸をなでおろした。
「ですが……」
最初のコメントを投稿しよう!