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突然、赤鬼の表情が曇ったのを見て、青年の胸は再びときりと跳ね上がった。
「少々別の問題がありまして……」
「別の問題?」
自分の過去の過ちを色々思い出しながら、青年はゴクリと唾を飲み込んだ。
「実は、管理システムに障害が発生していて、裁判が進められない状態なのです」
「か、管理システム……?」
青年は唖然とした表情で訊き返した。
「裁判を円滑に進めるためのコンピュータシステムで、病院で薬をもらったり会計したりするときに使う順番待ちを表示する装置みたいなものです」
「いや、それはなんとなく想像がつきます。僕が驚いているのは、死者の世界にコンピュータシステムがあるってことです」
「あっちゃいけないんですか?」
赤鬼のむすっとした表情が恐ろしくて、青年は慌てて首を振った。
「いえ別に。ただ、僕の思っていた死後の世界とだいぶイメージが違うな、と」
「確かに、驚かれる方は多いですね。ですが、電子化による効率化は死者の世界でも必要なのです。日本じゃ人口減少なんて言われてますが、こっちは、どんどん人口が増えているんですから。いろいろ大変なんですよ」
「はっ、はあ……」
僕に不満をぶつけられても、と思いながら青年は頷いた。
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