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「ですが、今回はその電子化が仇になりました。ほら、間もなく平成から元号が変わるでしょ。その新しい元号に対応するために改修をしていたんですが、いろいろと不具合が見つかって。紙の時代ならこんなことは起こらなかったのですが」  青年の胃がギリリと痛んだ。 「死者の世界でも、日本の元号を使っているの?」 「もちろんですよ。生者の世界と死者の世界で違う元号を使っていたら混乱する人もいるでしょ。ですからここでも、生者の世界の決まり事には従わないといけません。そういうわけでして、修正が完了して、裁判が再開できるようになるまで、待っていただきたいのです。……あっ」  赤鬼は何かを思い出したように、手元のファイルへ目を落とし、それから期待するような眼差しを青年の顔へ向けてきた。 「貴方、生前システムエンジニアだったんですよね。よければ修正を手伝ってもらえませんか?」 「えっ! 嫌です。絶対に嫌です!」  青年は全力で首を左右に振った。ずっと会社の帰りが終電続きだったのは、青年もその対応に追われていたからだ。死んでからも関わるなんてまっぴら御免だ、と青年は強く思った。 「そうですか……」赤鬼は残念そうな表情を浮かべたが、すぐに諦めてくれた。「とにかく、裁判が再開するまで、適当に暇を潰していただけませんか?」 「暇を潰せ、と言われても……」  あたりは何もない白い空間が広がっている。こんなところに居るなんて一時間だって耐えられないだろう。     
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