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 2ヶ月くらい前、僕は当時付き合っていた彼女に振られてしまった。前いた事務所が入っている建物内の別の会社に勤めている女の子だった。  彼女は好きな男が出来たと、僕のことを突然あっさりと振ったのだった。 「突然あっさり」とは言ったが、前々からちょっと怪しい雰囲気もなくはなかった。彼女とは共通点があるし気も合うと思っていたが、振られる前は「あれっ?」と思うことが多くなっていた。あんなに気が合うと思っていた彼女と、考え方とか感じ方が違うな、思うことが多くなってきたのだ。  彼女との関係が怪しくなっても、僕は「気のせいだろう」と特に何もしなかった。いずれ、また気の合う者同士に戻るだろうと思っていたのだ。  でも、結局僕は彼女に振られてしまった。  振られた直後は彼女を説得しようと思ったが、彼女の方に復縁する意向が全くないとわかると、僕は「仕方ない」と諦めた。ただ、諦めたのは良いものの、同じ建物内で働いている限り彼女と顔を合わせてしまう。顔を合わせる度にツラい気持ちや悔しい気持ちが溢れてくるのはイヤだなと思っていた時に、僕へ転勤のオファーが来たのだった。  僕は転勤の話を二つ返事で承諾した。   彼女、今頃どんな気持ちでいるだろう、と僕は新しい事務所の天井を見上げながら思った。僕が転勤したと知ったら、多少は驚くだろうか?   でも、もう僕のことなんて忘れていて、僕がいなくなったことにすら気付いていないのかもしれない……。 「――浜田」 「はい!」  僕は急に名前を呼ばれて、慌てて後ろを振り返った。後ろにはこの事務所の部長が立っていた。 「今週の金曜日の夜、用事あるか? お前の歓迎会をしようと思ってるんだけど」 「本当ですか? 用事ありません、ありがとうございます」 「じゃあ、決まりだな。場所とかまた連絡するから」  部長はそう言うと、自分の席に戻って行った。僕も仕事の続きを始めた。
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