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 歓迎会が終わりに近付いた頃、僕は五月さんの隣の席の人がどこかへ行ったのを見計らい、五月さんの近くへ行った。 「――五月さん」 「あっ、浜田さん、これから宜しくお願いしますね」  五月さんは優しそうな笑顔を僕に向けた。  五月さんは事務職をしている女性で、電話や会社のイベントで会って挨拶をしたりしたことはあったが、こうやって面と向かって話すのは初めてな気がする。よく見てみると、僕と同い年のはずなのに、まだ学生でも通ってしまいそうなほど童顔で、可愛らしい顔立ちをしていた。背も低い方で、全体的にこじんまりとした大人しい印象だった。 「実はさっき、五月さんの免許証見てビックリして。俺と生年月日が一緒だったんだ」 「えっ? 本当?」  五月さんは目を見開いた。「じゃあ、浜田さんも昭和64年生まれ?」  僕は「浜田さんも昭和64年生まれ?」と言う五月さんの言葉に、妙な嬉しさと親近感を感じた。 「そう、昭和64年生まれ!」 「本当? 私の周り、昭和64年生まれが全然いなくって。しかも、生まれた日も一緒なんて、すごい偶然ね。もしかすると、同じ日生まれの人と会ったのも初めてかも」 「俺も初めて。大体、俺の周りにも昭和64年生まれが全然いないんだよね」 「そうそう、意外といないんだよね。ひどい人だと『昭和64年ってあったっけ?』って訊いてくる人もいるし」 「あっ、俺もそれ言われたことある」  僕と五月さんは「昭和64年」の話で盛り上がった。そして、歓迎会がお開きになる頃には、僕と五月さんはすっかり打ち解けてしまっていた。 「まさか、浜田さんが私と生年月日が同じだったなんてね。でも、仲間が出来たみたいですごく嬉しかったし、今日はすごく楽しかった! これからもよろしくね」  居酒屋の前で別れる時、五月さんは僕を見上げながら笑顔で言った。 「うん、こっちこそよろしく」  五月さんは笑顔のまま手を振ると、そのまま真っすぐと歩き始めた。  僕は段々と遠くなって行く五月さんの後ろ姿を見ながら、めまいのような、何となく頭がクラクラとするような感覚を覚えた。  そう言えば、この間フラれた彼女と初めて話した時もこんなクラクラする感覚を覚えたっけ。  この間、フラれたばかりなのに……と僕は自分に呆れた。自分は多分、絶対五月さんのことを意識し始めているんだなと思った。
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